ほどほどに良く、ほどほどに不自由
今回は、長男が小学校の図書館サポーターさん(そんな役の方がいるのも初めて知りました)に借りてきたこちらの本。
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(眞鍋明人・著、2020)
長男は単に歴史好き、徳川家康好きという興味本位で借りてきたそうなんですが(^◇^;)
著者の眞鍋明人(まなべ あきひと)さんは大日本印刷営業職を経て、
吉本興業でプロデューサーとして人材育成など様々な事業を展開。
現在は、日テレHRアカデミア理事としてご活躍されております。
※HR:ヒューマンリソース=人的資源、人材
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もしも徳川家康が総理大臣になったら
「ビジネス小説」とありますが本作の舞台は2020年。
新型コロナの初期対応を誤った日本の首相官邸でクラスターが発生。あろうことか総理が感染し、死亡。
国民は政府を何も信頼しなくなり、日本はかつてないほどの混乱の極みに。
政府はかねてから画策していたAIとホログラムにより偉人たちを復活させ最強内閣をつくる計画を実行。
そしてAIにより選ばれた総理大臣は徳川家康。
言わずもがな戦国の世を終わらせ、250年続く江戸幕府を開いた人物ですね。
閣僚も日本の歴史人物のオールスターメンバーです。
- 経済産業大臣:織田信長
- 財務大臣:豊臣秀吉
- 厚生労働大臣:徳川綱吉
- 農林水産大臣:徳川吉宗
- 法務大臣:北条政子
- 外務大臣:足利義満
- その他にも大久保利通、石田三成、緒方洪庵、近藤勇などが登場します。
そして皮肉にも総理大臣の補佐役である官房長官に選ばれたのは、
江戸幕府を終わりに導いた男・坂本龍馬。
AI内閣がコロナ渦対策、経済対策、そして外交に立ち向かう。
偉人AIの驚異的な決断力と実行力から、政治不信に陥っていた国民も歓喜し、最強内閣に酔いしれていく…。
なかなか切り込んだ設定やなぁとも思いつつも…
歴史好きな方なら、どうしても惹かれてしまいますよね(^-^)/
長男のことを「興味本位で」と言っておきながら、
私もちょっとどんなんかな〜?とページを開いてみました(^^;)
偉人の政治哲学、功績
本作、歴史好きなら言うまでもなく楽しめるのですが、それほど詳しくない方も大丈夫。
総理大臣家康を始め、偉人の過去(当時)の功績も説明されており、
閣僚に抜擢されてる理由も納得。と言った所でしょうか。(人選は好みがあると思いますが)
政治や経済の視点からそれぞれの人物を見るというのも新鮮で、
伝記や時代小説とは違った視点で歴史人物、歴史を学べるのも本作の魅力のひとつでしょう。
民衆を導き、守るリーダーの知恵、決断、行動。
時を経ても、その偉業から学べることはたくさんありますね!
また歴史人物が主に現代の政治、政治家(国のリーダー)と国民に対して批評する点が、
実に核心をついていて、私自身気づかされ、考えさせられる事が多い作品でした。
いくつかそんな言葉をご紹介(^.^)
「民が決めるなど正気かの。きちんと上の者が決める。それが政(まつり)じゃ。
いちいち民の顔色をうかがっとっては正しいことなどできぬ」
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ーP.59 豊臣秀吉の言葉より
「将たるものの仕事は決めることじゃ。決めたことは何があってもやる。
そういう将の下には、それを成し遂げる者が集まるものじゃ。」
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ーP.86 豊臣秀吉の言葉より
「今の政治と国民の関係は都合が良すぎる」
現代の日本の政治、国を評するのに、これほど的確な言葉はないんじゃないでしょうか。
一国民として、襟を正して聴くべき言葉ですね(-_-;)
折り合いをつける
さて総理大臣、徳川家康の政治哲学は如何なるものか?気になりますよね。
キーワードは「折り合い」、「ほどほど」です。
「統治者とはすなわち、すべての者を満たさず、そして、すべての者を欠かさず。それをおのれの信念にて行う者を言う」
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ーP.402 徳川家康の言葉より
「両方じゃ。(中略)医療と経済。両方とも大事である。ただし、今の状況で両方とも完全に満足のゆく形にはならぬ。どちらもほどほどに良く、ほどほどに不自由になる。」
「我らはそれが極端にならぬようにせねばならぬ。それが政である。」
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ーP.272 ,273 徳川家康の言葉より
「無論、すべては自由にならぬ。人が集団で、生きていくためにはさまざまな決まりをつくらねば、またあの戦国の世のような無秩序な時代が生まれる。自由と不自由、この折り合いをつけることこそが人を率いる者に必要なことじゃ。」
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ーP.473 徳川家康の言葉より
リーダーの資質はバランス感覚、中庸な精神といった所でしょうか。
厳しくもあり、慈愛に溢れた心意気。徳川家康、改めて恐るべしです。
※中庸(ちゅうよう):かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。
他人の自由のために不自由を引き受ける
さて、この「折り合い」、「ほどほど」といった考え方は国家や政治、リーダーだけではなく、
個人の生き方にも通じますよね。
本作でも徳川家康の考えを、坂本龍馬が代弁しているシーンがあります。
「人の上に立たんでも、人と関わることは避けられんぜよ。愚かであるからこそ、進むぜよ。 自由と不自由の折り合いをつけ、愚かさを過去から学び、未来をつくるぜよ。」
「一人ひとりが他人の自由のためにひとつでもええから不自由を引き受けることじゃ。そうすることで、等しく皆に自由が行き渡ることになるぜよ。」
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』ーP.424 坂本龍馬の言葉より
個人においても「折り合い」、「ほどほど」といったバランス感覚の生き方は、
重要だと思いませんか?
混迷な社会を生き抜く知恵と力が、そこにはあるように感じます。
【まとめ】「ほどほど」の精神〜歴史に学び、人間らしく生きる
いつの時代も、自由と不自由という矛盾に「折り合い」をつけ、
悩みながら、考え続けながら、新しい時代を切り開いていった。
現代の課題に照らし合わせ、歴史人物の過去の功績や、言葉に触れることで、
あらためてそれを強く感じることができた作品でした。
それはまた、これまで人類が築き、時には壊したりもしてきた、
人間らしく生きてきた歴史、文化と言い替えてもいいものじゃないでしょうか。
『人との折り合いを学び、ほどほどに良く、ほどほどに不自由な関係性』
今を生きる我々も、悩み、考えながら、たくましく生き、未来を作る。
歴史人物からの熱い想いを感じさせてくれる物語でした。
良書との出会いに感謝。ではまた〜(^-^)/
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