ソン・ウォンピョン『三十の反撃』
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本屋大賞の作品は欠かさず読んでいってますが、今回は翻訳部門の本屋大賞作「三十の反撃」(邦題、2022年受賞)。
デビュー作「アーモンド」で、こちらも翻訳部門の大賞を受賞(2021年受賞)されているソン・ウォンピョンさんの2作目となります。
韓国で映画監督として既に活躍されてて、その後、夢であった小説家としてデビューされてます。
ちなみに1979年生まれで私と同い年。それだけで個人的に親近感もってしまいますねd(^^)
”普通”でありたい
本作はごくごく普通の人であり、普通に生きることを求め、普通の悩みを抱えた30歳の女性が、
ひょんなことから同年代の仲間と、社会の不公平や不満に対し、自分たちなりの”反撃”を企てていくストーリー。
彼らに共通する「1988年生まれ」には韓国の時代背景が関係しており、
大学卒業後も非正規雇用でしか働けない20代(「88万ウォン世代」と呼ばれる)がいて、
彼女も正規雇用(=普通)を目指し、その為に不安・不満を抱えながらも辛抱強く生きています。
”反撃”をしていきながら、自分が求めている”普通”とは何なのか?人は何のために生き、どこへ向かうのか?と
自分を見つめ直すことに。
ごく普通の人の悩み、不安、不満が描かれていて、共感できる部分が多くあります。
20代後半というのも人によって変化の有り無しに差が出てきて、
「このままで良いのか?」と不安になってしまうのもすごくわかりますね。
悩みと”向き合う”こと
悩みから目を背けない。悩みと向き合う。
「言うは易く行うは難し」ですね(-。-;
他人から見たらしょうもないことでも、悩んでる当人からすれば、
日々実際に悩まされてるわけで、目を背けてたり、向き合ってないとは感じないもの。
(周りが気づいてなくても、”向き合ってない”と自覚してる逆のパターンもあるかもですが)
勿論、周囲の環境は他人の影響を受けることもあるのですが、
最後はやはり自分でそう気付くしかないんですよね〜。
人の悩みは尽きないもの。
でも悩みがあるから、成長できたり、人への思いやりを持てたり。
誰しも、もがきながらも自分の幸せに向かって進み続ける以外の道はないのかもしれません。
声を上げることで変わること
社会に対し、”反撃”という形で行動を起こしていく彼女とその仲間たち。
最初から、この”反撃”で社会が変わるわけではないとわかっていながらも、
そこに何か(自分なりの意義)を求めて、もしくは後から理由をこじつけて、社会に対し行動を起こし、
少しでも社会に影響を与えたい、変えたいともがいていく。
しかしやはり何も変わらないことに気づき、失望、挫折を感じてしまうことに。
失意の果てに彼女は気付きます。
声を上げることで社会は変わらないかもしれない。でも自分は変わる。
所詮は自分が変わることで、社会を変えていくしかない。
生き、悩み続けなければならない。
何よりも大切なのは”自分”。
”自分”を置き去りにして環境を変えることが目的になってしまっていると、
いつの間にか自分の夢や、本当にやりたい事を見失って、
そのことさえも気づかない。自分がわからなくなる。
私自身も似たような経験があります。
人は何のために生まれ、どこへ向かうのか
現代は情報が溢れ、それこそ多種多様な生き方があり、選択の自由も広がっているように思いますが、
周囲や日本・世界の状況を見る限り、人々を覆う閉塞感、虚無感、疲労感、諦めのようなものを感じてしまうのは私だけでしょうか。(勿論そんなことを感じさせない人もたくさんいますが(^^;))
でも自由だからこそ、選択肢が膨大だからこそ、”自分”が何のため生きるのかが求められ、
自分に向き合っていくことが、より必要とされる時代なのかもしれませんね。
私自身の経験から思うこととしては、「自分のため」のその先に「何かのため」(家族、仕事、社会、etc…)があるのが、
自分にとっても周りにとっても良いのかなと。
『自分を愛せなければ、他者を愛せない』との言葉もありますが、
人に限らず、物事にも通じるように思います。
「それを愛している自分が好き!」そんな風に生きれると素敵ですね。
読み終わってからもじわ〜っと沁みてきて心に熱いものを感じさせてくれる本作品。
きっと著者も温かい、そして情熱を持った方なんだろうなと。
では今回はこのへんで(^^)
素敵な本との出会いに感謝。皆さまも”ご自愛”ください。
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著者のデビュー作にしてこちらも本屋大賞翻訳部門第1位(2021)
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