”償うこと”ー『贖罪の奏鳴曲』より

贖罪の奏鳴曲

『贖罪の奏鳴曲』を読んで

※当サイトは原則、小説のネタバレはしない方針で運営させていただいてますm(_ _)m

久しぶりの投稿です^^;(約半年。。)

今回は、中山七里(なかやま しちり)さんの作品。初めましてです(^。^)

『贖罪の奏鳴曲』(しょくざいのソナタ、2011)

どんな罪状であっても負けない悪辣(あくらつ)弁護士、

御子柴 礼司(みこしば れいじ)シリーズの第1作。

relic
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気になっていた作家さん(^^)

本作は、弁護士ものの推理小説です。

主人公の変化、成長の描写が良い

推理小説としても面白いのですが、ヒューマンドラマと言いましょうか、人間関係の描写がとても良い。

会話のやり取りの中に、熱があり、思いやりがあり、込められたメッセージがある。

主人公の御子柴だけでなく、少年院の稲見教官、少年院時代の友人嘘崎、御子柴を追う刑事渡瀬。

個性もあり、哀愁もたっぷりな登場人物のやり取りが見どころです。

🔽 御子柴の言葉を一つ紹介(^^)/

「家庭の状況は良くないが、男の子が我慢を続けるのはそんなに悪い話じゃない。障害者であろうとなかろうとな」(四肢麻痺を患う子を持つ母親に対して)

『贖罪の奏鳴曲』より
relic
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「艱難汝を玉にす」(かんなんなんじをたまにす)ですね!

【意味:人間は苦労・困難を乗り越えることによってりっぱな人物になる】

深く、愛情のこもった言葉ですね〜。

甦る感情、自戒の念

何もかもに失望し、空虚な日々を送る少年院時代の御子柴に運命の出会いが訪れる。

年1回の合唱会に、一人ピアノを弾き始める同じ少年院の少女の演奏に心を動かされる。

ピアノ独奏 ベートーヴェン・ピアノソナタ〈熱情〉

彼女の演奏に触れ、自分の心の奥底に眠っていた感情が渦巻く。

彼の心を動かしたのは、彼女の演奏の内容ではなく、そのピアノ演奏から感じる「自分は変えられる」「未来は変えられる」といった”心の強さ”でした。

彼女のピアノは、彼の感情を甦らせ、罪に対する自戒の日々を送るきっかけとなります。

relic
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この作品の見どころですね。

この出会いが御子柴の新しい人生の始まり(原点)となる場面。

演奏中の彼が受けた衝撃、感情の変化の描写は感動的です。

人の想いを表現する”音楽の力”。”感情”の大切さ。

「人間らしく生きる」ことのエッセンスが詰まっています。

「償え」、「懸命に生きろ」

そして、罪の意識に苛まれ、「何のために生きるのか」との御子柴の問いに対し、

文字通り、命懸けで諭し、導き、力強く背中を押してくれたのが、少年院の稲見教官。

作品名、またテーマである”償うこと”に対しての稲見教官の言葉が、厳しくも温かい(熱い)内容なので、厳選して紹介。

「きっと嘘ってのは自分に吐くものなんだろう。だから、そういう言葉を吐き続ける奴は自分を騙し続けて、いつしか更生の機会を失っていく。償いというのは言葉じゃなくて行動だ。だから懺悔は口にするな。行動で示せ。」

『贖罪の奏鳴曲』より

「後悔なんかするな。悔いたところで過去は修復できない。謝罪もするな。いくら謝っても失われた命が戻るわけじゃない。その代わり、犯した罪の埋め合わせをしろ。(中略)死んだ人間の分まで懸命に生きろ。決して楽な道を選ぶな。傷だらけになって汚泥の中を這いずり回り、悩んで、迷って、苦しめ。自分の中にいる獣から目を背けずに絶えず闘え

『贖罪の奏鳴曲』より

「お前は既に他人の人生を奪っている。だから他人のために生きてこそ埋め合わせになるんだ」

「そうすることで償うことができる。勘違いするなよ。罪を償うのは義務じゃない。罪びとに与えられた資格であり権利だ

真っ当な人間に戻る権利だ

『贖罪の奏鳴曲』より
relic
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もうこの言葉だけで、私からは何も言うことはありません(;_;)

愛情を注いでくれる存在に出会えること。

その存在こそが「何のために生きるのか」を教えてくれる。

稲見教官の一言一言は、少女のピアノ同様、彼の胸の奥に突き刺さる。

償うこと ー 使命に生きる

悩む、償う

罪を犯す人、それを追う人、罪を犯し更生した人、罪を恨み復讐する人。

本作はその罪を”償うこと”を様々な登場人物の視点、言葉から考えさせられる内容でした。

また実際に犯罪に縁のない人生を歩んでいる人でも、

人生において後悔や、失敗、「あの時こうしてあげれば」といった”罪の意識”が残ることは、

少なからず経験があることではないでしょうか。

それに報いる行為、生き方として、本作のメッセージは心に響き、

前を向いて「懸命に生きる」「自分の与えられた使命に生きる」ことの大事さを伝えてくれます。

relic
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その人にしかできない”償い”、”生き方”、”使命”がある。

日々それに向かって闘い続ける人生でありたいものです。

最後に稲見教官の言葉をもう一つ。

「人生に面白いもクソもない。あるのは懸命に生きたか、そうでないかだ

『贖罪の奏鳴曲』より

良書との出会いに感謝。ではまた〜(^^)/

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🔽中山七里さん『このミステリーがすごい!』大賞受賞作(2009、第8回)も読んでみたい!

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