『滅茶苦茶』ー染井為人
※当ブログでは小説の結末に関しての記載(ネタバレ)はないのでご安心ください。
今回は染井為人(そめい ためひと)さんの『滅茶苦茶』(2023年)。
初読み作家さんです。
染井さんは1983年千葉県生まれ(40歳)、芸能マネージャー、舞台演劇などのプロデューサーを経て
2017年に作家デビューされています。
勝手ながら、映像や舞台のプロデュースされてた方って心理描写や構成が上手なイメージがありますね。
横溝正史ミステリ大賞の優秀賞を受賞されたデビュー作『悪い夏』(2017)、ドラマ化された『正体』(2020)など他の作品も気になります(^.^;)
「心のコロナ」
さて本作はコロナ禍の影響をきっかけに、タイトル通り人生が”めちゃくちゃ”になっていく3人のドタバタ転落劇が描かれています。
『心のコロナ』といった表現が作中にもありますが、社会環境、周囲の変化に物理的にも、精神的にも
つらく思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
改めて「コロナ禍」の影響って何だったんだろうか?
実際に酷い状況になってしまった人もおられると思いますが、
主人公たちほどの経験はなくとも、ふと自分や周囲の出来事を思いながら
そんな事を考えさせられる作品でした。
世の中の光と影
コロナ禍影響に限った話でもないのでしょうが、世の中はあまりにも不公平なもので
社会の変化によって、変化の波に乗っていける人、取り残される人がいて
ずる賢くルールをすり抜ける人が得をしたり、真面目にルールを守っている人が損をしたりといった事が起こりますよね。
当然その逆のケースもあり、また得をしたから=幸せなのかというとそうでもなかったり…
この物語もそんな世の中の光と影、人の善悪の迷いなどの心理が巧妙に描かれてます。
展開もスピーディーで、3人がどう関わっていくのかも気になって
一気に読んじゃいました( ^ω^ )
『滅茶苦茶』ー漢字の意味は?
余談になりますが、タイトルの『滅茶苦茶(めちゃくちゃ)』、何でこんな漢字なんだろう?茶?
客に茶を出さないとか苦い茶を出すとか礼儀に背くような意との説もあるようですが、
定説はないらしく、音に漢字を当てただけみたいですね。
他にも「無茶苦茶(むちゃくちゃ)」、「破茶滅茶(はちゃめちゃ)」みたいな表現もありますが、
それらも同様らしいです。(方言で微妙に違うものも。「わやくちゃ」とか。)
口語でも「めっちゃ」、「むっちゃ」と言った表現もありますね。
漢字が好きな私としては、故事成語であることを期待していたのですが残念(*´-`)
【感想】不思議な縁〜ひとりではないと感じる事
完全に話が逸れてしまってので、本の感想へ(^^;
年代、性別の違う3人のドラマが描かれた本作。
求める、求めないに関わらず、自分の人生に関わってくる不思議な縁。
人生って縁する人によって本当に大きく変わってしまうものだなと。
この出会いの意味は?なぜ今?自分の人生にとって大事な縁なのか?
一概に「良い縁」、「悪い縁」なんて、後になってみないとわからないのかもしれませんね。
また他人の影響を受けないように自分がしっかりしてれば良いという考えもあるでしょうが、
ひとりでは生きていけないのも人間というもの。
誰かに支えられ、誰かを支え、誰かに邪魔され、誰かに迷惑をかけて…。
まさに自分と色んな縁が日々「滅茶苦茶」に絡み合いながら、「今」がある。
そんな風に考えると、この物語も他人事ではなく、自分の生活もたくさんの縁によって成り立っているんだなと。
ひとりでは決してないし、これからどんな出会い、縁が待っているのかも誰もわかりません。
若い人には恐さ、不安もあるかもしれませんが、私は今この年齢になって考えると楽しみの方が勝りますかね(^^)
著者、またこの本に巡り会えたのも、何かのご縁ですね。
良い意味でも、悪い意味でも”人間らしさ”を感じさせてくれた本作。
また違った視点で描かれる他作品での”人間らしさ”も気になる作家さんですね。
ではまた〜v(^^)
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