『流浪の月』を読んで
※当サイトは原則、小説のネタバレはしない方針で運営させていただいてますm(_ _)m
今回は凪良さんの『流浪の月』(2019)
2020年本屋大賞受賞された作品です。
凪良ゆうさんの作品初めてでしたが、展開に引き込まれ一気に読んでしまいました^^;
私の言葉は伝わらない
この作品で何度も描かれる、事件の当事者(加害者・被害者)の想い、言葉は伝わらないという点。
人間は先入観や、初めに得た情報から、その事実を自分の中で理解してしまうと、
そのイメージは簡単には変わらないもの。
加害者の想いや、言うことなんて、理解したくもない。理解するにも値しない。
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
ただこの作品では、被害者への哀れみや善意からくる無理解が主に描かれており、
あらためて、事件や事故の当事者への理解とは、報道されている事実や批評のような
簡単にまとめられるものではないことを深く感じ、また反省させられます。
「人を正しく理解する」ことは、難しい。
言葉で言うと「その人の立場になって考えて」ってことになるんだろうけど、
中身がすごく薄っぺらい。
「人を想うこと」の難しさですね(~~;)
事実と真実は違う
「事実と真実は違う」ーこちらも言葉だけ見れば、当然そうなのだろうと理解はできる。
しかしこの作品を読むと、非常に重みのあるメッセージであることがわかる。
報道や偏見、イメージで、事実はこうも簡単に塗り替えられてしまうものか。
悪意がある場合は言うまでもないが、悪意がなくてもそういったことに陥ってしまうことがある。
人間社会の「無関心」の残酷さが、そこにはある。
多くの情報に触れることができる現代においては、より大事な視点となるだろう。
”歴史の謎”にしてもそうですが、当事者にしかわからない”真実”がある。
事実として認識している事柄を、どうとらえるか。
自分で考える力、思考の幅を広げていきたいものです。
私が私でいられる場所
世間の誰からも”真実”を理解されない2人。
だからこそ、互いの幸せを願い、支えあう存在が生きていく希望となる。
「人はひとりでは生きていけない」と感じると同時に、
「私が私でいられる場所」ーそう感じさせてくれる存在に出会えることの幸せ、
”一緒にいたい”という純粋な愛に感動(;_;)
自分をわかってくれる=自分が自分のままでいられる。
そんな出会いに巡り会える人生でありたい。
人が幸せを感じる、強く生きていくことができる純粋な気持ち。
大事にしたいですね。
『流浪の月』心揺さぶられる作品でした
全体的な感想としては、”とても切ない”。
沸き起こる感動や涙、心温まる。そういったのとは違う静かな印象です。
でも「悲哀を乗り越えていく」「自分らしさを感じさせてくれる出会い」という
誰しもが持つ強く生きるテーマが描かれており、人の本質的な部分に訴えかける
心揺さぶられる作品でした。
読んでいる途中もさることながら、読後の満足感がじわじわくる一作。
あと全く性格の違う2人のやりとりや共感していく様も楽しかったです。
良書との出会いに感謝。幸せな時間をいただけました(^^)
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